『われわれ人間は暗愁の彼方から来た』と
 僕は思っているんだ
  だから 君にも 僕にも 
  常に愁がついて廻るのさ

 ……… 前略 ……… そんなわたしが今一番熱中していること
は〈言葉〉と〈明かり〉です。
 何故かと言いますと、わたしは常々「われわれ人間は暗愁の彼方
から来て、暗愁から遠く離れて行こうとしている存在である」と感
じており、そのどうしようもない哀しみや愁を抱いた人間の心を暖
かくさせる一助、即ち、暗愁から遠く離れさせる一助としては言葉
と明かりがもっとも優れていると思い、それらを創るべく努力して
みたいと考えたからです。
 言葉は〈ドクターグース〉と命名し(小説家の宗田理先生が名付
けてくれました)、短い言葉を書いているのですが、これに関して
は具体例をあげる方が分かり易いので、ここに二例ほど紹介します。
 『不幸があっても、それ以上の幸せがきっとあるよ』とか『頑張
りたい人は頑張って、頑張りたくない人は頑張らないで』というよ
うな短文を和紙に書き、それを蔓で造った額縁に張り付け、団栗と
竹、種子の殻で造った虫を二、三匹飾り付けているのです。今では
二百近くになっています。 
 明かりもやはり蔓と和紙で造っておりますが、これは〈遊影灯〉
と自分で命名したのですが、作品が名前負けしていないか心配して
います。
 毎日が試行錯誤の連続ですが、これらが人々の心を少しでも暖か
く出来たらと念ずるばかりです。 ……… 中略 ……… 一生懸
命やり過ぎているせいか、最近では〈蔓〉が〈夢〉という字に見え
て仕方ありません。

               (ドクターグース エッセイ編
                      少しづつ より)