家庭文化
昭和34年5月号

 
   
     

世界のキッチンめぐり
ケ ニ ヤ
後藤董子


 ケニヤの土着民たちの主食はバナナです。このバナナもクッキングバナナといって、渋いばかりでおいしいものではないのですが、煮たり焼いたりして1年中たべています。

 そのほかの主食はトウモロコシの粉。お米といっしょにドロドロにして、味も何もないまま食べたり、カレーをかけて食べたりしています。肉も丸焼きにしてよく食べます。

 家は広い土地に土まんじゅうのような円い土の家を見渡す限りつくって、部落で生活していますが、中は真っ暗で、電灯など使いませんから、台所は野外です。生活もほとんど野外なので、青天井のリビングキッチン。

 バナナの葉っぱがお皿で、自分で作った炭や薪を燃して、いまはやりのバーベキュー料理という風流な食事風景ですが、こうした原始的なくらしの中に、時おり都会的なアルミの鍋釜、スプーン、ホーローのツボなどを発見すると、ちょっと錯覚を起します。

 ナイロビという都会へ出かせぎにゆく男たちも多いのですが、その都会は非常にヨーロッパ化されていても、服装や食べ物など部落へもちこまない人種です。

 イギリスの植民地なので、都会風に生活改善をし、食べものも栄養を考えてとる条件はいくらでもありながら、なかなかそうしようとはせずお金をもうけると、まず土地を買い、第2に自家用車を買い、家や衣類はあとまわしで、昔ながらの耳輪や腕輪のアクセサリーをたのしんでいるようです。

  (婦人画報編集局勤務1957年早大山岳部で組織したキリマンジャロ登はん隊員・談)
写真はナクルの町の市場、バナナを買う風景